10年前に不動産投資し儲けた女性「当時は住宅奴隷」 北京
date:2012.11.28
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- by「Insight China」 (インサイトチャイナ)
- on 2012/11/27
「私たちは『房奴(家の奴隷の意。住宅ローンに苦しむ人)』の第1陣。当時銀行で何百万元(数千万円)ものローンを組んで、住宅を十数件買っていた人は、ほかの人からは絶対に『狂っている』と思われていただろう。自分ですらそのように感じていたのだから」。
徐芳(50代女性、仮名)さんは取材に対して、中国で不動産バブルが起きる前に不動産投資を行い、幸運にも大成功したいきさつを語った。上海証券ニュースを伝える「中国証券網」が報じた。
北京で生まれ育った徐さんは、不動産バブルとは何かがまだ知られていなかった2003年、親戚や友人と共に約100万元(約1200万円)を不動産に投資することに。自分と夫の貯金すべてをつぎ込んで、友人らと北京の東側区域にある3つの団地の住宅十数件を購入した。
徐さんは「当時、銀行がモーゲッジローンを扱っていたので、頭金は20%でよかったし、利率も低かった。それでも、住宅を十数件も購入したので、借金の額は3、4百万(約3600-4800万円)で、毎月の返済は4万元(約48万円)近くだった。あの頃の私たちの1カ月の給料は2000元(約2万4千円)程度だったので、周囲の人は『常識を逸脱している』と感じていた」と振り返る。
「当時、『不動産転がし』という概念もまだなく、私たちはただ、資産を増やすための道を探していただけ。あの頃、株の売場がブームになっていたけど、知識もなく、それには手を出すことはなかった」という。
毎月のローン返済に追われていたものの、徐さんらの投資は報われることになる。約4年たった07年、北京の不動産価格が急騰し始めたのだ。徐さんらは同年から08年にかけて、住宅3件を売却し、そのお金で銀行のローンを全額返済。多額の利益を得た。
徐さんらが当時購入した十数件の住宅のうち半分は今でも所有しているといい、不動産の過度の高騰を抑制するために、中国政府が現在、不動産の購入やローンなどに制限を加える政策を実施しているため、今のところ売却するつもりはない。「私たちが購入した住宅はどれも立地条件がよく、将来必ずもっと値上がりする。それに、今でも十分の家賃収入がある」
記者らが徐さんらの思い切った投資に舌を巻いていると、徐さんは「『投機家』とも言えるけど、『房奴』でもある。『房奴』だった頃は苦しい生活を余儀なくされ、非常に大きなストレスを抱えていた。投資に失敗した人もいくらでもいる。ローンの返済ができずに、利益が出る前に、住宅を売却してしまった人もいるし、意見の食い違いから離婚した夫婦さえいる。
私も、十数件の住宅のうち私名義のものは一部だけだったが、ローン返済のストレスでめいっていた。生活費を除く毎月の收入すべてをローン返済にまわしていた」と隠れた苦労を語る。
徐さんらにとって、中国政府が打ち出す不動産投資抑制政策も負担の種になった。「不動産転がし」をする人は1千万元(約1億2千万円)の資金が手元にあれば、銀行のローンを利用して不動産を購入し、さらに担保ローンを利用してさらなる資金を手にすることができる。その資金を使って、再び不動産を購入し、また担保に利用するという手法を繰り返して、投資規模を1億元(約12億円)程度にまで膨らませることができる。
ただし、それには大きなリスクも伴う。中国政府は05年、「個人が住宅を購入し2年以内に転売した場合、転売価格全体に対し営業税を課税する」という不動産投資抑制政策を実行。06年には2年という制限が5年に調整された。これにより、不動産投機に必要なコストは急激に増加。不動産市場は低迷することになり、徐さんらのように「不動産転がし」をしていた人にとっては致命的な打撃となった。
「買う時は値上がりすることしか頭になく、値下がりするなんて思ってもみなかった。でも、05-06年にかけては、赤字でも不動産を売却しなければならない人がいた」。当時、周囲の人が借金返済のための資金繰りに奔走し、泣く泣く不動産を手放さなければならなかった様子を、徐さん今でも鮮明に記憶する。
「私たちも何件か売却することを考え、約100平方メートル(約30坪)の住宅を売りに出した。60万元(約720万円)で購入した物件だったが、売り出し価格は80万元(約960万円)。多少の値段交渉にも応じるつもりだった。利益に関しては、赤字にさえならなければいいと思っていた。でも半年経っても、買い手は見つからなかった」。
不動産投資抑制政策が実施されて以降、徐さん夫婦は北京の経済技術開発区である燕郊にある別荘を老後用に一件購入したといい、政策的に問題さえなければ、今後も不動産投機に投資したいという。その理由は、「安定していて、もっといい投資ルートがないから」。
一方、北京中原地産(不動産)市場研究部の張大偉・総監は「03年ごろの不動産購入者を『房奴』と呼ぶことはできない。なぜなら、当時の不動産価格の絶対値は低く、価格は健全な状態で、賃貸価格と販売価格の比率も合理的だった。不動産を貸し出せば、毎月のローン返済に困ることはなかった。また、個人収入も継続的に増加し、これら購入者の負担はさらに小さくなった」と指摘する。
「不動産転がし」という行為に関して、業界関係者は、「購入やローンに制限を課す政策により、新たな投資や投機が抑制されている以外に、今後、不動産税の導入などの手段を通して、投機のコストを上昇させ、『不動産転がし』をも抑制しなければならない。研究では、不動産の税率が平均1ポイント上昇すると、不動産所有率が5-6ポイント低下することが分かっている」との見方を示す。
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