基本に立ち返って考える、日本人の「嫌中」 渡航経験等から分析
- by本坊 七海
- on 2013/8/16
残暑お見舞い申し上げます。連日、日本と中国で競うような猛暑の報道が続き、結局同じ高気圧の下か・・・と改めて感じてしまいますこの頃。
さて、弊社では「中国への好意度」を定点的に観測しています。(調査対象として日本の人口構成に合わせた1,200名を全国から毎回抽出しています。概要については文末をご参照ください)
今年7月の調査結果は、3月に比較するとやや改善しました。尖閣問題からPM2.5、鳥インフルエンザと色々あった中国との関わりも、この2,3カ月はやや落ち着いていることが影響しているのでしょう。ただし、改善といっても「嫌い」が少し「どちらでもない」に振れた、というレベルです。
つまり全体に言えば相変わらずの圧倒的「嫌中」です。
それでは7月の調査結果を見ていきましょう。
表1. 日本人の中国への好意度(2013年3月 / 7月調査 比較)
改めて、素朴に疑問に思ったのは、「果たして、中国を実際に見て“嫌い”と言っている人はどれくらいいるのだろう?」ということです。
意外と、このようなシンプルな質問はあまりしたことがないのですが、実際に調べてみると、(15-69才の)日本人の86%は中国に一度も行ったことがない、という結果になりました。
多くの日本人にとっては、中国は「近くて遠い国」といったほうが感覚に近いのだろうと想像されます。
表2. 日本人の中国渡航経験率 (2013年7月調査)※ 複数回答
中国渡航歴と、中国への好意度はやや関係があるようです。面白いことに、特に2007年以降に行った人は“嫌中度”が相対的に低いのに対し、2001年以前の渡航経験者は、むしろ渡航未経験者よりも“嫌中度”が高いのです。
私は、実際に中国や中国人と接することなく「好き」「嫌い」を判断してしまうのは非常にもったいないことのように感じますが、さりとて「ともかく行ってみればいい、好きになる」というほど単純なものでもなさそうです。ここは興味深いところです。
表3. 渡航経験率と中国への好意度の関係
現実として、日本人の「嫌中」意識のほとんどは、行ったことがない人によってつくられていることは事実で、それは仕方ありません。問題は、ではなぜ「行ったことがないのに嫌い」になってしまうのか。というところにあると思います。恐らくマスコミの責任は大きいでしょう。
唯一、やや希望が持てるのは、「若い層(20代以下)ほど“嫌中度”が低い」という点です。
表4. 年代別 中国への好意度
年代による差がどこから生まれるのか、深い分析は別の機会を持ちたいと思います。併せて、若い層が今後も“実態のない”ネガティブな印象を持たないようにするにはどうしたら良いのか、考えていきたいものです。
調査概要
株式会社 日本リサーチセンターオムニバス調査(NOS)による自主調査。住宅地図データベースから世帯を抽出し、個人を割当てて訪問留置調査手法を用いて実施している。
15-69才の男女1200人を対象とし、地域・年齢・性別構成については、日本の人口構成に比例するように配慮している。