中国で不動産価格が下落しても投売りが起こらない理由
by西河 豊 on 2013/1/30
中国デジタルアーカイブス VER2-17 中国不動産バブル崩壊説を疑え! その2
視点1 中国は、定期借地権であり、収用権は国家にある!
これは所有に関する、心理的背景を説明したものです。中国と言う共産国家では、土地の所有権はなく、上物の不動産にしても、定期の期限が打たれています。(一般住宅、マンション70年以下、工業用地50年以下)このような期限付きであると、長期で価格に自動制御が掛かり、本格的バブルは形成されないと言われています。日本の土地信仰はこの逆であり、永久所有だと言う考えがあります。
但し、中国においてもやはり買った不動産は自分のものと思い込んでしまう人も存在するためこの視点が全ての中国人に通用するものとはここでは言わないでおきます。
視点2 一般市民も「牛」と「熊」には慣れっこ!
現在の経済は、人の心理に大きく影響されるので、庶民心理を説明します。不安になると資産の投売りが始まり、それが、相乗して、売りが売りを呼ぶ状況になるからです。この不安心理が、バブル崩壊を呼ぶ引き金です。
これは、主に、株式相場で言われる用語ですが、
株式高騰期・・・「牛市」(ニウシ)・・・牛が来たよ。
株式暴落期・・・「熊市」(シオンシ)・・・熊が来たよ。
(動物に例えるのは中国人の得意技です。)
と言う。それは、挨拶の中でも使われ、いつものことだという感じで、そこに悲壮感はなく、慣れっこになっています。その意味では悲観論者の多い日本国民より中国国民はしぶといものがあります。
中国でも株価暴落時に、証券会社の前で「もう、どうにもならん、破産だ」と、インタビューに答え騒ぐ年配の人がいますが、その言葉は、演技(嘘)であり、日本円で10万円も株を持っていない人がほとんどなのです。実態はそういうところで時間をつぶすしかがない退職老人です。
また、都市で不動産物件持ちで事業をしている事業者にはこういう意識があります。都市で、多少、不動産価格が下がったとしても、まだ、中・西部に行けば、その4分の1の価格で不動産が手に入ります。そこで、いままでの蓄えを生かし、もうひと勝負できるという心の余裕です。これも不動産価格低下で投売りが起こらない理由です。
ここで、注意しなくてはならないのは、中国では3級都市レベルでも日本の政令指定都市以上の賑わいがあるのです。中国を分析するときには都市の不動産価格の推移だけを見ていては不十分で、中国全体の勢いも合わせ分析することが必要なのです。